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2.緊急コンテナ埠頭の計画概要
緊急コンテナ埠頭の計画は総理大臣の諮問機関である「阪神淡路復興委員会(下河辺淳委員長)」から緊急提言されたものである。神戸港の港湾施設の復旧は、コンテナ埠頭の復旧を最優先として進めるが、全てが回復するまでに概ね2年を要する。このあいだのコンテナ荷役は、本格復旧工事と調整を図りながら応急復旧された岸壁で暫定的に実施され、順次本格復旧した岸壁ヘシフトしていく計画であった。他施設の完全復旧までの間コンテナ取扱い能力を補完して神戸港の空洞化を防止する目的で計画され、半年という短期間で完成させるのが最優先課題であった。また、港湾背後のアクセス道路への負荷を軽減するため、フィーダバースとしての機能も兼ねたものにする。
位置は図-1に示すように、六甲アイランドの南側に計画され、整備内容は以下のとおりである。
・外貿コンテナ船用2パース(水深−13m.680m)
・海上フィーダ用2バース(水深−14m,320m)
・コンテナ専用クレーン5基
本桟橋の供用は、コンテナ取扱い能力を年間590万t(平成6年の神戸港の取扱実験の15%)増大させるという数値的指標だけでなく、神戸港復興のさきがけとして重要な役割をもった。
これらの緊急桟橋の工事は、運輸省第三港湾建設局、神戸市港湾整備局及び(財)神戸港埠頭公社により分担して実施されたが、以下では第三港湾建設局施工分の外貿コンテナ岸壁西端部350mの工事について報告する。
3.果意コンテナ模橋の設計施工の基本的老え方
3−1.主な設計条件

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Fig-1. Location of an Emergency Container wharf.

被災前の施設は-7.5m岸壁であり、設計震度は0.18であった。復旧にあたり、神戸港全体の設計震度の見直しを行い、本施設については重要度係数をB級からA級に見直し、設計震度が0.2にあがっている。
復旧岸壁法線の前出し幅はコンテナクレーンの陸側車輪が既設のケーソン上に載るように29mとした。
3−2.工期短縮のための設計施工の方針
緊急コンテナ埠頭は通常2年程度の工期を要する桟橋工事を半年で完成させた。そのため、以下のような設計・施工の考え方を取り入れた。
(1)被災岸壁を土留壁として活用した桟橋構造
緊急コンンテナ埠頭の構造は、図−2に示すように被災変形した既設の重力式ケーソン岸壁を土留め壁として活用し、その前面に桟橋を築造する構造とした。これにより、通常の桟橋で背後の埋立部の土留め工事はほとんど必要としないため大幅な工期短縮が可能となった。但し、設計震度の増加分土留め壁の安定を確保するため、岸壁背後を水砕スラグ(γ=1.3t/m3)で置き換えるとともに、桟橋部の陸側鋼管杭と既設ケーソンとの間に間詰石を投入した。
また、桟橋の背後の鋼管矢板は爪部の摩擦による打設能力の低減をなくすため、爪のない連続鋼管杭とした。鋼管杭同士の間隔は爪がある場合と同じとし、連続鋼管側には大きめの間詰石の投入施工管理を行い隙間からの土砂流失を防止した。
(2)等厚コンクリート床版構造の採用
通常の桟橋式岸壁では上部コンクリートの施工にかなりの日数を要し、工程管理上、重要な工種である。このため、図−3に示すような従来の梁・床版構造に代えて、図-4に示すようなプレキャスト方式を前提とする等厚コンクリート床版を採用し、型枠の製作日数短縮を図ることができた。
(3)プレキャスト化と大型化
桟橋の上部工だけではなく、既設ケーソン上の陸側クレーン基礎等陸上製作可能なものはほとんどプレキャス

 

 

 

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